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第三十二話② ※※※

ผู้เขียน: 三木猫
last update วันที่เผยแพร่: 2026-05-06 15:47:29

「…美鈴?」

声が聞こえて目を開くと、ママのドアップ。

「美鈴。何をぼんやりしているの?早くその本を持って廊下に出てみなさい」

そしてまたこのセリフ。

私の手にはセーブの本。

流石に二度も同じ事があれば、夢でも幻でもないって理解出来る。

いや、元々夢の可能性は大分低かったんだけどね。

そしてもう一つ、夢を否定するに思い至る理由がある。ここに、いつもママのドアップがあるこの時に戻る理由。こんな事現実的じゃないと思って、つい思考から排除してたんだけど…。

でも…もう、そうとしか考えられない。

私はやはり『手に持っていた』本を開いた。

そこに書いてある文字は、私の文字。

『ハートの意味が解らない。でもこれはヒロインが持つべき本らしい』

これは確かに私が書いた。それは間違いない。でも以前書いた時と違う箇所がある。私の書いた文字じゃない。それは以前と変わらない。違うのは勝手に浮かび上がった日付の後ろにあるハートの数だ。私が最初に見た時は三つあった。それが今は一つになっている。

それを見て私は確信した。間違いない。

これ、『残機』だ。残機って言うのも解り辛いかな?『ライフ』と表記するゲームもあるし。

要は失敗できる回数って奴だ。

RPG系のゲームには珍しいものでもある。これが良くあるのはそう、例えば土管工のおじさんが巨大亀を倒しに行くあのアクションゲームとかかな?

今は土管工ゲームについての詳細は省くけれど、何故私がこのハートにその役割があると思ったのか。

それは、私の記憶から解る事。

恐らく、私は二回、『死んだ』のだ。

一回目は、旭に化けた表門の女に刺された時。

二回目は、旭を庇った時に投げられた、多分即死効果のある毒針を刺された時。

初めて死んでゲームをやり直した時。私はこのセーブの本をちゃんと確認しなかった。

今の状況が夢か何かだと思いたかったから。事実として受け入れ難くて、それに皆の安全を優先したかったのもある。だから本を確認しなかった。でもそれじゃ駄目なんだ。今になってママが以前言っていたこの世界はゲームの世界だって、油断するなって言った意味を痛感した。

私は机に駆け寄りペンをとる。

『何の因果かは解らない。だけど、今解る事を書き記そうと思う。いつどんな状況でまたやり直す事になるか解らないし、もしかしたらやり直せないかもしれない。でもこの本は役に立つ。使い方次第だから。例えママが見れなくても、攻略対象のお兄ちゃん達なら読めるかも知れない。少しでも可能性は広げておいて損はない筈。だから書いておく』

まずは今開始された御三家ルートの事。

次に表門の存在。

そして、表門の目的。

表門が欲しているのは私の生き血。

……生き血欲してるのに殺してどないすんねんっ!

とりあえずその突っ込みまで書いておこう…。

…あと、表門の人間の脳内が若干残念な事も書き記しておく。

全部書きとめて。さて、どうしようか。

…ひとまず、ママに全て話しておこう。私は前回説明する時、いくつかの事を省いて説明した。私がちゃんと理解してない事があったってのと、ママが危険かもって可能性もあったから黙ってた。だけど、今解る情報を踏まえて状況を鑑みるに狙われてるのはあくまで『私』個人みたいだし。だったらいざって時に私を捨て置いて貰えるように、ママがよりよい判断を下せるように説明しておいた方が良い。

「ママ、実はね?」

ずっと私を見守ってくれていたママに私は事の経緯を説明した。

ママは驚く事なく、ただ、何かを考えては私の話す度に相槌をうっている。

全てを話し終えると、ママは両手を広げてむぎゅっと私を抱きしめた。ママ、絞まってる、首がっ、ぐえっ。

「……して…」

?、今ママ何か言った?

「どうして…私の娘がこんな理不尽な目に合わなきゃいけないの?もう、二度も命を落としたなんて、あっさりと口にして…。私の娘が、一体何を、したって言うのよっ…」

泣いてる?

それとも、怒ってるのかな?

なんにしても抱き締める腕が震えていて、力が込められて苦しい私も震えてる。へるぷみー。

暫く私を抱きしめて、ママはゆっくりと私を腕から解放した。大丈夫っ、へろへろしてるけどっ、これもママの愛だって解ってるよっ、解ってるからーっ!

「美鈴。確認するわね。そのセーブの本に書かれているハートは最後の一つなのね?」

「うん。一個だけ。これってどう捕らえるべきだと思う?」

「それは、ゼロと言う単位があるかないか?って話ね?」

「そう」

これは物の数え方の話で、ゼロをカウントに入れると捉えるならば、私はもう一度だけ失敗出来る余裕があることになる。逆にゼロが本当の意味でゼロならば、私にはもう後がない。要は1の後の0って単位があるかないかって話である。

「…ないと、思っておいた方が良いわね。最悪の事態を想定して動いた方がいいわ」

「だよね。だとするともう失敗は許されないよね」

「そうね。…失敗したわ。こうなるなら中途半端に私はセーブ機能を知らせるべきではなかったのよ」

「どうして?」

「私が変な時に書かせたりしなければ、ゲームのスタート場面。御三家ルート確定した所からやり直せていたかもしれない。そうしたらもう少し時間に余裕が出来たもの」

「そう、かな?そうとも限らないかもよ?もしかしたら、ゲーム開始していなかったって事で、ゲームの補正が入らずに一回目刺された時にそのまま死んだことになってたかもしれないし」

言っていて少し怖くなる。

死と隣り合わせなこの状況。もし足掻く事も出来なければ、死と言う扉は開け放たれたまま私をあっさりと飲みこんでしまったかもしれない。

体がふるっと震えた。

そんな私をママはもう一度抱きしめてくれる。

「…出来る事からしましょう。まずは私が金山達に『表門』の連中が必要としている『美鈴の生き血』について調べさせるわ。美鈴は、前回のスキルが生きているかどうか、必要なスキルは何か、今一度確認しておきなさい」

「うん。解った」

ママが私の頭を撫でてから部屋を出たのを見送って、私はステータスを開いた。

…スキルは……、あれ?

入手した事になってる?セーブ前のデータは引き継がれる仕様なんだ。成程…。

そう言えば、私『危険察知(1)』『先手必勝(1)』『硬直短縮』を持ってたんだよね?……活かされた?

レベル1程度じゃ何の役にも立たないのでは?

危険察知…まぁ確かに、危険察知して旭を助けた、かな?

先手必勝…敵が動く前に肘打ちかました、かな?

硬直短縮…捕らえられる前に動けたから、男を前にする硬直時間は減ってる、…のかな?

全部疑問レベルなんだけど。これってどうなの?

あ、でもちょっと待って?

私の経験値の所ももしかしたら引き継がれてるのでは?

そう言えば、2回目の時リセットされて割り振りし直したっけ?

…って事はアイテムとスキルだけは引継ぎで経験値はリセットになるのか。だとしたら一番最初の時透馬お兄ちゃんに全部割り振ってたら、スキル効果変わってたんじゃん?…勿体ない事した…。

今回はどうしよう?透馬お兄ちゃんに割り振ってスキル効果上昇、新スキルゲットにするか。それとも他のお兄ちゃん達に割り振ってパラメータを上げるか。

悩む。だって、今回は失敗は許されない。…今回必要な情報は全てママが仕入れてくれる。表門の事はママに任せて良い。

となると、考えるべくは自分の事。

日にちはあまりない。と言うか全然ない。

だけど私はレベルを上げる必要がある。下手な動きをすると前回と同じく商店街を火事に…あぁ、そうか。火事は無かったことになってるんだ。それに関しては本当に良かった…。神様たまには良い事をしてくれる、か…?いや、してない。前言撤回。不幸な目に遭い過ぎて神様が少しでも良い事をしてくれると感心してしまう。だめだめ、神様には厳しくはモットーです。

まぁ、それはさておいて。一つ絶対に避けたい事がある。それは、今度は絶対に商店街を巻き込まないっ!ってこと。華菜ちゃんやお兄ちゃん達の家が無くなるのは駄目。皆は絶対に幸せにならないとっ!

でも、それもこれも私が乙女ゲームのヒロインな所為なんだよね…。だから皆を巻き込んじゃう。…いっそ、ママの言う通り、誰か一人を高校生の時に選んでいたら…。ううん。それも駄目だね。解ってる。そんな不誠実な事しちゃ駄目。

ゲームのヒロイン、攻略対象者、ヒロインの友人、親友、ライバル…記憶があるかないかってだけで、皆関係者なんだよね。

ふと、思った。

…いっそ、お兄ちゃん達に話してしまおうかって。

だってお兄ちゃん達は強い。ママに鍛えられて、鴇お兄ちゃんの脇を固められるほどの強さがある。きっと事情を説明したら、お兄ちゃん達は自衛してくれる筈。だって狙われてるのは私だもの。

狙われているって知ったらお兄ちゃん達は私を守ろうとするかもしれない。それは確かに避けたいけれど、でもそれは私の説得次第だ。それに、お兄ちゃん達だったら私が自分を守る為にとる何か良い手段を教えてくれるかもしれない。

あ、でもちょっと待って?

そうすると旭の守りが手薄になる?

お兄ちゃん達ばかりに気を取られてる訳にもいかない?

良い案だと思ったけど、これはこれで危険なのかもと思うとがっくりと肩を落とした。

八方塞がりじゃーん…。ふみぃ…。

どうしたらいいんだろう…。

誰にも迷惑をかけずに、誰にも怪我をさせずにこの『無限ーエイトー』ってゲームの展開を終わらせるには…。

にゃーにゃーにゃー♪

?、メール?

私はスマホを手に取った。

誰からのメールだろう?

手早く操作して画面を見ると、差出人は鴇お兄ちゃんだった。

何だろう?

メールを開封すると、そこに書いてあった文字は簡潔で。

『使えるものは何でも使え』

とただそれだけ。

色んな意味でとれるけど、だからこそどう受け取って良いか戸惑う。

鴇お兄ちゃんは、今の私の現状なんてきっと知らないはず。

なのに、どうしてこんな的確な事が言えるんだろう…。普通はこんな予知みたいに的確な事なんて言えない……ん?ちょっと待ってね?良く考えたら、それって鴇お兄ちゃんのデフォだよね?先読み。…うん、気にしないで返信しよう。

『私、使ってる方だよ?』

鴇お兄ちゃんの意図を探りつつ返信すると、直ぐに返事が返ってきた。

『透馬達をちゃんと扱えてるか?』

…本当に知らないんだよね?鴇お兄ちゃん。私もママも何も言ってないよね?

大体お兄ちゃん達を扱うって。道具じゃないんだから。それに下手するとお兄ちゃん達も危険なんだから。

やっぱり言わない方が良い。迷惑になるし、危険だから。

うんうんと頷いていると、再びメールが届く。

『どうせお前の事だ。迷惑がかかるとか言って、何も話していないんだろう?』

わーお、ばればれ。

鴇お兄ちゃん、盗聴器でも仕込んでるのでは?

メールの着信音は更に鳴る。

『相談出来る事ならしておけ。俺は今側にいけないんだ。頼れるものは何でも頼れ。使えるものは何でも使え。あいつらはお前に頼られて潰れる様な奴らじゃない。むしろお前に頼み事される事を心の底から喜ぶ。鬱陶しい』

鬱陶しいって…鴇お兄ちゃん。お兄ちゃん達の扱い、酷くない?

でも……。

折角お兄ちゃん達の為に我慢しようと思っていた心が揺れる。

私だって解ってはいるんだ。私一人で二回も失敗している。お兄ちゃん達のルートなら、お兄ちゃん達の協力が必要不可欠だって。

だけど、私はお兄ちゃん達を守りたい。ううん。違う。…私は、私一人でも運命に抗えると、そう、思いたかったのかもしれない…。

携帯に文字を綴る。

『頼っても、いいのかな?』

『あぁ。頼ってやれ。アイツらだったら良い捨て駒…盾くらいにはなる』

『…鴇お兄ちゃん。さっきも思ったんだけど、お兄ちゃん達の扱い雑じゃない?』

『良いんだよ。あいつらにはこの位が調度いい』

『そうなの?』

『あぁ。そうだ。美鈴。ついでに伝言頼む』

『うん?なぁに?』

『…選ばれた奴、歯の二、三本覚悟しとけ、って言っといてくれ』

『??、分かった』

選ばれた奴?歯の二、三本?どゆこと?

伝えろと言われたからには伝えるけども。

にしても、鴇お兄ちゃんには本当敵わないなぁ…。何もかもバレバレで、私が尻込みしてた事も、全部読み取っちゃって解決しちゃうんだもの。

苦笑しながら私はスマホをポケットにしまい、部屋を出た。階段を降りて真っ直ぐ玄関へ向かう。

まずは奏輔お兄ちゃんに会いに行こう。奏輔お兄ちゃんは私が前世の記憶があるって事、信じてくれたから。一番話をしやすい筈。

あっと、いけない。このままで外に出たら危険だ。襲撃日とは違うけど何があるかは解らない。

私は急いで自室に帰り、念の為にと装備品を今出来る最強の物にして、改めて外に出た。

ロープを持ちたい所だけど、アイテム欄に入ってなかったから、諦めてうさぎさんのぬいぐるみを抱きしめた。小屋に行けばあるかもしれないけど、今はそんな時間もないし。

にしてもRPG系って本当難しいね。異世界転生でRPG世界に転生した人、ほんっと尊敬するわー。現状把握にかなりの時間を要するんだもん。

大地お兄ちゃんに貰ったぬいぐるみを抱きしめつつ、靴を履いて、行って来ますと家の中に声をかけて、改めて外に出た。

家の敷地を出て坂道を降りる。

お兄ちゃん達に貰った物を身につけてるだけで、どこかホッとするね。大学生にもなって外でうさぎのぬいぐるみ抱っこしてるのはどうかとも思うけどねっ!もう、気にしないっ!どやっ!

両手でうさぎのぬいぐるみを抱っこしながら、少し急ぎ足で奏輔お兄ちゃんの家へ向かう。

しまった。坂道で急ぎ足って、それもう駆け足じゃん。

坂道を駆け下りて、商店街に入り奏輔お兄ちゃんの家でもある呉服店へと入る。

すると、そこには奏輔お兄ちゃんの直ぐ上のお姉さんである咲お姉ちゃんがいた。

「あら?天使やないの。どないしたん?可愛いの抱っこして」

「えへへ。奏輔お兄ちゃん、いますか?」

「おるよ。今部屋で仕事しとる。おいで」

「はーい」

咲お姉ちゃんが手招きしてくれたので、靴を脱いで店を経由して中に入る。

他愛ない話をしつつ、本当は奏輔お兄ちゃんの部屋の場所知ってるけど案内されるままついて行くと、あっという間に部屋の前。

「奏輔ー。あけるでー」

相変わらず返事も待たず、開けると断言してドアを開ける。

お姉ちゃん越しに中を覗くと、そこにはヘッドフォンをしてパソコンと向き合っている奏輔お兄ちゃんがいた。

咲お姉ちゃんにここで大丈夫だと告げて、ちらちらとこちらを振り返りながら店へと戻る咲お姉ちゃんを笑顔で見送って。姿が見えなくなったのを確認してから中に入ってドアを閉める。

そっと近寄って背後から何をしているのか覗く。

…あれ?これってお店の売り上げ試算表じゃない?確か、奏輔お兄ちゃんの生家であるこの呉服店って、ここの店以外にも店舗展開されてるんだよね。

それを全部ここで管理して、尚且つ、奏輔お兄ちゃんが売上等々の試算してるって事は?もしかして奏輔お兄ちゃん跡継ぐのかな?奏輔お兄ちゃんなら問題なくこなせるとは思うんだけど。

だけど何でこんなに集中?しかも気配に敏感な奏輔お兄ちゃんが私に気付かないとは。そんだけ集中する何かがあるってこと?計算がおかしいトコとかあったのかな?報告が間違ってるとか?

何度もスクロールして数値の確認してるもんね。どれどれー……あれ?計算間違ってる。

私は奏輔お兄ちゃんの背後から手を伸ばして、間違ってる部分をトントンと叩いた。

奏輔お兄ちゃんは、私の意図に直ぐに気付いて数値を正しい物に修正した。すると、流石奏輔お兄ちゃん。さっさと集計を出して保存まで一気に終了させた。数学の問題とかでもそうだけどさ。こう一度こうだと思い込むと間違ってる数とかって気付き辛かったりするんだよねぇ。うんうん。

一人コクコクと頷いていると、ヘッドフォンを外し奏輔お兄ちゃんがくるっと後ろを向いた。

「待たせたな、姫さん」

笑顔で言ってくれるから、嬉しくて私にも笑みが移る。

「んーん。大丈夫。えへへ」

ゴスッ!

ふみっ!?奏輔お兄ちゃん、何故に唐突に机を拳でぶっ叩くのっ?

「…ほんっま、可愛ぇ…」

何?何々?奏輔お兄ちゃん、今何て言ったの?奏輔お兄ちゃんの手からするギリギリ音に声が遮られて聞こえなかったんだけどっ。

「奏輔お兄ちゃん?」

膝を折って、下から奏輔お兄ちゃんを覗き込む。すると、何故か頭をわしゃわしゃと撫でられた。解せぬ。

「奏輔お兄ちゃん、本題入って平気?」

「おお、ええで。どんとこい」

「あのね?その…お願いが」

「よし。解ったっ。任せときっ」

「うんっ、何も言ってないよっ。最後まで言いきれてもないよっ?」

「俺は姫さんの頼みは断らへんで。どんなことでもな」

奏輔お兄ちゃん、優しい…。

でも、そろそろ頭を撫でる手、止めて貰ってもいいかな?髪が凄い事になりそうなので。それから、私もう18だからね?それに奏輔お兄ちゃん、私の外見と中身の年齢違うって知ってるよね?ねっ?

「それで?お願いって?」

奏輔お兄ちゃんが撫でるのを止めて私を立たせてくれる。脇の下に手を入れてぐいっと…子供扱い丸出し。ついつい笑ってしまう。私に自分が座っていた椅子を譲ってくれて、奏輔お兄ちゃんはベッドに腰かける。直ぐに奏輔お兄ちゃんはベッドの上にあったスマホを手に取って何か、操作中?

真っ直ぐ向かい合ってじっとその様子を見ていると、奏輔お兄ちゃんがすまなそうに苦笑して、メールが来ていて返信したと言って、ごめんと謝罪までしてくれた。私が唐突に来たんだから気にしなくても良いのになぁ。

私は気にしてないと首を振ると、奏輔お兄ちゃんは安心したように笑って、私の言葉の続きを待ってくれる。

奏輔お兄ちゃんの聞く準備が出来たようです。えっと、何処から話そうかな?

「奏輔お兄ちゃん、覚えてるかな?その、私に前世の記憶があるって話」

「覚えとるよ。姫さんが高校の時の話やね?」

「うん。そう。それでね?その時話して無かった事があるの」

「……実は『これから起こる事が解る』とかか?」

「ふみっ!?な、なんでっ!?」

「姫さんの話す内容とか、行動を見て何となく、や。見てきたかのように動く所も多々見えたし。あぁ、でも元々よう出来た子なんやろうなって事もちゃあんと解っとるで?姫さんが努力家って事もな」

褒められた。嬉しい。ちょっと照れくさくてぬいぐるみにもふっと顔を埋める。

「姫さん。続きは?」

「あ、うんっ。それでね?私がどうして未来の事を先読めるかって事なんだけど。私ね?前世で今いる地球と同じ、地球生まれの日本暮らしだったの。だけどね、ちょっと違うと言うか、…なんて説明したら良いのかな。…そう、所謂パラレルワールド見たいな感じで。今いる地球とは若干の違いがあるの。それでね?その前世の地球の日本で『白鳥美鈴が主人公の乙女ゲーム』があるの。攻略対象は…」

私は、今の私の置かれている状況。ここが乙女ゲームの世界だって事を奏輔お兄ちゃんに出来る限り解りやすく、理解して貰えるように説明した。

奏輔お兄ちゃんは馬鹿にすることなく、最後までちゃんと私の話を聞いてくれた。それだけでも嬉しくて有難いのに、

「……姫さんを、襲った上に、殺した?どこのどいつや……?」

眼鏡を中指で押し上げて、こっちが引く位怒ってくれた。奏輔お兄ちゃん、嬉しいけど怖いです。

椅子に座ったまま、すこーしばかり後退した。

そんな私に気付きつつも奏輔お兄ちゃんは、眉間に皺を寄せたまま話を続けた。

「つまり、や。姫さんは乙女ゲームのヒロインで、その流れに背くように生きてきたつもりやった。せやけど、想定外に攻略対象者、全員にあってしまったから、せめて誰ともくっつかないエンディングを迎えようと思っとった。それで何とかエンディングを迎えたものの、実はそのゲームはファンディスクのようなもので、本当はこれからの、姫さんが大学生になってから起きる事が本編だった。ここまでは合うとるか?」

「うん、バッチリ」

「で、本編に入ったものの、そのゲームを姫さんはプレイした事がなく、聞きかじりの知識で何とか頑張ったが、失敗し二回死を迎えてしまった」

ママが前世の記憶を持ってる事は今は省いておいた。でも奏輔お兄ちゃんなら気付いていそうだから、多分問題ないと思う。

私かなり突拍子もない事を言ってると思う。その自覚は大いにある。

こうして目の前にいるのに、死んだって何言ってんだって感じだよね?うぅ、ごめんね、奏輔お兄ちゃん。

でも奏輔お兄ちゃんは大きく頷き、私を真っ直ぐ見つめた。

「結論として、姫さんは『俺に助けて欲しい』って言いたかったと思ってええか?」

「うん…。図々しいお願いだとは、思うんだけど…」

奏輔お兄ちゃんの、お兄ちゃん達の命に係わる事になる。危険度はかなり高いと思う。

でも、もう失敗は出来ないの。本当ならこの選択は駄目だと思う。前世からの知識を持った私が上手く立ち回らなきゃいけないんだと解ってる。

だけど、鴇お兄ちゃんが頼ってやれって言ってくれたから。私はお兄ちゃん達の優しさに甘える事にした。駄目だってちゃんと解ってるから。解ってるけど…お兄ちゃん達に味方になって欲しい。これは私の我儘なの。

「お兄ちゃん達を危険に巻き込んじゃう事になる…。命だって危ないかも知れない。勿論、嫌だったら」

「姫さん」

嫌だったら直ぐに断ってくれて良いと言いながらも思わず俯いてしまった私の言葉を遮る様に名を呼ばれ、私の頭の上にぽんっと手が置かれた。

恐る恐る顔を上げると、そこには奏輔お兄ちゃんの優しい笑顔があった。

「何でもっと早う教えてくれなかったんや?その遠慮しいな所も姫さんの美徳やけどな。…どんどん頼ってくれていい。姫さんの願い事一つ叶えられへん程、俺達はやわじゃないで?」

「そうそう。遠慮なんてしなくて良い」

「大丈夫。姫ちゃんも姫ちゃんの大事なモノも絶対にオレらが守ってみせるよー」

予想外の声が聞こえて慌ててドアの方を振り向くと、そこには…。

「透馬お兄ちゃんっ?大地お兄ちゃんもっ?」

笑顔で二人が立っていた。どうしてここに?驚いて奏輔お兄ちゃんを振り返ると、その手には携帯がありフリフリと見せ付ける様に振られた。

あ、話し始めた時奏輔お兄ちゃんが携帯を弄ってたのって、二人を呼ぶためだったんだ。

二人は私に向かって笑みを深めた。うぅ…カッコいいなぁ。三人共。前世の記憶があるのに、年だけ重ねた私なんかとは比べものにならないくらい大人だ。

透馬お兄ちゃんにも大地お兄ちゃんにも前世の話はしたことがない。だけど、きっと私が話しているのを部屋の外で聞いて、疑いもせず信じてくれてた。

あんな突拍子もない話を信じてくれたんだ…。

私はその事が嬉しくて、知らず笑みが零れた。すると何でか三人が地面に崩れ落ちた。

「…っ、…おい、奏輔」

「なんや…っ」

「可愛いー…オレ達の姫ちゃん、可愛いー…」

三人にしっかりと目を合わせてありがとうと言いたいのに、何故か明後日の方向向いて視線が交わらない。なんで??

そう言えば昔、鴇お兄ちゃんが言ってたっけ?えっとなんだっけ…三人がこうするのは病気で発作だから気にするな、だっけ。しばらくしたら治るって。じゃあ、ちょっと放置。

ついでにさっきの仕返ししとこう。奏輔お兄ちゃんの頭をなでなで。うわー…さらっさら。私の髪ふわふわだから羨ましい。…もうちょっと撫でたい。

そう思ったのに、透馬お兄ちゃんにやんわりと止められた。やーん…。

「ごほんっ。さ、対策練るで」

「うん」

「姫さんの話によると一回目の襲撃が8日。それは間違いないんやね?」

頷いて、答えようとしたけれど、

「ちょっと待て。それより先にちょっと確認させてくれ。なぁ、姫?」

透馬お兄ちゃんに遮られたので、視線が透馬お兄ちゃんに集まった。

「そのステータスって奴、俺等も開けたりしないのか?」

予想外な事を言われた。でも確かに。私が開けるなら攻略対象であるお兄ちゃん達も開けておかしくないよね?

物は試し。そう言って透馬お兄ちゃんはステータスと口にした。すると、透馬お兄ちゃんの目の前にステータス画面が現れた。

「…出たな」

「って事は」

「オレらもー?」

二人が同時にステータスと口にすると二人の前にも画面が現れた。

三人はたいして驚きもせずに、淡々と自分のステータスを確認している。

「成程。戦闘スキルと、生産スキルは別表示か」

「…職業を長押しすると獲得出来るスキルが表示されるで」

「んー…どうやら数値パラは固定アップー。あ、でも移動速度は限界突破可能ー。入手アイテムで突破出来るー」

……ちょい待って?

お兄ちゃん達、私の知らない事にどんどん気付いてない?私にもそれ教えて、プリーズ。

「姫。姫のパラメータも確認していいか?」

「えっと…BWHに目を瞑って貰えれば…」

「は?これ、そんな事も載ってるのか?」

「大丈夫や。もしあれなら、大地だけ外に出しとくで?」

「なんでオレー?」

ふみ…ちょっと恥ずかしいけど…。ステータス画面を出して見せようとすると、

「姫。見せたくない所は長押しで非表示出来るぞ」

まさかの答えがっ!?

早速BWHの部分を長押しすると、数値だけが見えなくなった。ほんとだーっ!?

え?待って?この短時間でそこまで理解したのっ!?お兄ちゃん達すげー…。

これで何の問題もなくなったから、お兄ちゃん達に素直に画面を見せると、何やら三人で手早く操作を始めた。

ねぇ?お兄ちゃん達。一体何をやってるの?私にも教えて、プリーズ。…このセリフ二度目だわ。

「…主人公だから、か?」

「多分」

「逆に言えば、詰め込めるって事だけどねー」

置いてけぼり…。どうしたらいいのかなー?私。

取りあえず…手持無沙汰だから、…奏輔お兄ちゃんの仕事代わりにしておこう。

椅子に乗ってガラガラっとねー。

パソの前に到着したので、カチャカチャと。

……奏輔お兄ちゃん。ごめん。待ってる間に奏輔お兄ちゃんの仕事、むこう三ヶ月分、終わっちゃった…。

しかもそれでも時間が余って、私気付けば寝てました。

すよー……すよー……。

おねむです…。

おおー…ほっぺにふかふかの感触がある~…って、それは駄目じゃない?私。

椅子に座って奏輔お兄ちゃんの仕事を代わりにやって。それでも時間が余って暇だから寝てしまった。までは良いとして。この感触から考えるに私ベッドに寝てるんだよね?全身にふかふか感触があるもん。

ここで思いだしてみよう。

私が今いるのは何処?

そう、奏輔お兄ちゃんの家だよね?

そして、今の状況を思い出してみよう。いくら暇だからとは言え寝てる場合じゃないよね?

パチッと目を開く。

あれ?壁?私壁の方向いて寝てたんだね。よいしょっと。体を反転させて…あらら?

透馬お兄ちゃんと大地お兄ちゃんが床に落ちてる。…凄い恰好で寝てるね。絡みあってるけど、喧嘩の後?じゃれ合いの後?透馬お兄ちゃんの腕が大地お兄ちゃんの頭をヘッドロック。

…写真撮っておこう。

ポケットからスマホを取りだして、ぱしゃり。

後で鴇お兄ちゃんに送信しておこう。んむんむ。

「ん?あぁ、起きたんか、姫さん」

「おはよー。奏輔お兄ちゃん」

ポケットにスマホをしまいつつ体を起こす。

えっと声はしたけど、奏輔お兄ちゃんは何処に…?あ、ベッドを背に座って本読んでる。因みに私の足下の方ね。

本を読んでくつろいでるし、透馬お兄ちゃんと大地お兄ちゃんが力尽きてるって事は?

「ステータスの確認終わった?」

って事だよね?確認の為に問いかけたけど、奏輔お兄ちゃんがパタンと本を閉じて苦笑した。

「それなんやけど。これ意識がない人間のステータスは見る事が出来ひんみたいなんよ」

「あ、じゃあ私が途中で寝ちゃったから」

奏輔お兄ちゃんが苦笑いのまま頷いた。

あらー、ごめんなさい。

ステータスは本人に見せる意思があれば、多少遠くてもステータスを見せる事が出来るらしい。けど、その意識を失ってしまうとステータスも一緒に消えてしまうんだって。要は本人の意思次第って事かな。

私何時頃寝たんだろう?

キョロキョロと周りを見回して時間を確認したかったんだけど、時計が見つからない。

「寝てたんは大体2時間くらいか。色々考え過ぎて疲れとったんやね」

2時間…結構寝てた…。しょんぼり…。

私の事を考えて色々してくれたのに、私が寝ちゃうとかあり得ないよね。ふみぃ~…。

「姫さん。解りやすく落ち込んどるね。気にせんでもええよ。姫さんが寝る前には大体の方向性は決まっとったし」

「そうなの?」

「せや。で、誰が姫さんをベッドに運ぶかの争奪戦の結果がそれや」

奏輔お兄ちゃんの指さす先を視線で追うと兵どもが夢の跡?ちょっと意味違うかな?

「ま、こいつらが争ってる間に俺が運んだんやけどな」

え?じゃあ、透馬お兄ちゃん達争い損?そして、寝てるの?それとも気を失ってるの?どちらにせよどんな争いをしたんだろう…?

…つっついてみようかな?

ベッドをそっと降りて、あ、いけないいけない、ちゃんとベッドを整えてっと、これで良し。

いそいそ…透馬お兄ちゃんの側にしゃがみこんで、ほっぺたをつんつん。起きない。若干顔色の悪い大地お兄ちゃんのほっぺをつんつん。起きない。あれ?これ本当に大丈夫?

「透馬お兄ちゃ~ん、大地お兄ちゃ~ん?」

つんつんつんつん。

反応なし。にしても二人共お肌が綺麗で腹が立ちます。ケアも何もしないでこのつやつやだよ?つねっちゃおうかな。えい。

「いでっ」

「透馬お兄ちゃん、おはよ~」

「いででででっ、ちょ、姫っ?」

目が覚めた透馬お兄ちゃんが横目で私に疑問を問いかける。

「お肌つやつやの透馬お兄ちゃん達に若干イラッとしたのでつねりました」

キリリッ。

「キリッとして言う事じゃねぇと思うけど、姫のやることだ。可愛いは正義だからな。怒れないなっ」

キリリッとして言ったら、どやっと返された。

「姫ちゃん。次はオレの番ー。つねって下さいっ」

透馬お兄ちゃんを跳ね除け、土下座。

つねるの?つねって良いの?

堂々と触って良いなら触るよ?わくわく。

「さ、姫さん。話に戻ろか」

「そうそう。変なもん目に入れたら駄目だぞ」

「ふみみ?」

あれ?間に入られた。

奏輔お兄ちゃんと透馬お兄ちゃんに促されるまま、椅子に座る。そんな私の前にいつの間にか復活した大地お兄ちゃんを含めて三人が床に座った。

「さて、姫さん。俺等は姫さんが寝てから色々考えた。その結果として」

「うん」

「本来のゲームの流れに戻すのが一番だと結論が出た」

「本来のゲームの流れ?」

「そや」

「姫は言っただろ?ゲームの世界では俺達と接触する事により、謎の男が現れると」

「うん。それは間違いないと思う」

「だけど、それも姫ちゃんの記憶がある事で少し狂ってもいるって言ってたねー?」

「うん。言った。現に色々狂ってる所がある」

「それを本来の流れに戻す事で、襲撃のタイミングが解るし、迎え撃って、さらに反撃が可能になる」

「確かに…。でもそれだと、お兄ちゃん達が…」

「危ないってか?」

頷く。けれどお兄ちゃん達はそんな些細な事は気にならないと不敵に笑う。

「全く問題ないな。正直佳織さんのしごき以上に怖いものはねぇし。それに…それも覚悟の上で俺達に相談しに来たんだろ?姫」

それは、―――その通りだ。

私だって、お兄ちゃん達を巻き込むと決めた時点で、ある程度の覚悟は決めていた。お兄ちゃん達がもし私を助けてくれるって言ってくれたなら、私もお兄ちゃん達を全力で守らなきゃいけないって。私の為に体を張ってくれうる人達に恥ずかしくない態度でいないとって。

私はお兄ちゃん達と真っ直ぐ向き合って、協力体制をとるんだ。

「うん。やろう。お兄ちゃん達っ」

ぐっと拳を握ると、何故かお兄ちゃん達が嬉しそうに微笑んだ。

それから笑みが消えて、真剣な表情になった。これから作戦会議が始まる。

私も気を引き締めて頷いた。

「で、だ。過去の記憶を辿るに、姫が言っていた最初の襲撃は五月の八日で間違いないか?」

「うん。旭が逃げてきたのはその日だったよ」

「それは、ゲーム本編の襲撃と同じ日なのかなー?」

「どうなんだろう?私が知る限りだと、私が一人で外出して、初めてお兄ちゃん達の内の誰か一人と出会う。それから謎の男と戦闘になるって事だけなんだけど」

「一人で外出、か。どう思う?奏輔」

「…姫さん。一回目の襲撃の時、俺等は姫さんの側にいたんか?」

「ううん。いなかったよ。二回目の時もいなかった。偽物、本物別として、いたのは旭だよ」

「旭、か…。旭がキー?」

「…あり得なくはないんじゃないー?」

「何でだよ、大地」

「旭と三つ子の共通点。それは、姫ちゃんが語った『ゲームには本来いる筈のない人間』だってことー」

言われてハッとした。

確かに、ゲーム本編でママも誠パパも家にはいない事になってる。って事は旭達が産まれる訳がないんだ。成程。ある種のヒロイン補正が働いてるんだ。ゲームの流れに邪魔になるものを消す、もしくは利用する動きになってるってことか。私の可愛い弟達を、神様この野郎。私直々にフルボッコか、ママにフルボッコにして貰うか、兎に角フルボッコ決定。

「となると、旭達をこの街に置いておくと危険だな」

「姫さんと旭、どちらに対しても危険かもねー」

「ここは、誠さんか佳織さんに何処かに連れ出して貰た方がええな」

「ゲーム本編の事を考えると、佳織さんに連れ出して貰うべきだな」

「主人公である姫と仲が悪い設定になっているなら尚更だねー」

お兄ちゃん達は極力ゲームの状況に似せようとしてる。なら確かにママの方が良いね。誠パパと主人公はそこまで仲の悪い訳ではなかったと思うから。

私はスマホを取りだして、ママに今話し合った内容を伝える。するとすぐに返事が返ってきた。了解した旨と気を付けるようにと書かれている。

「あと、姫。暫く、花崎の家に泊まってくれ」

「華菜ちゃんの家に?」

「そうだ。本当なら商店街を一人で歩くのが良いんだろうが、正直命を狙われているこの状況で、姫を一人にするのも避けたい。かと言って家にいたらいたで、そこを狙われる可能性がゼロではない。本編に添う為には俺達が姫の家にゲーム開始直後からいるのは可笑しいからな。それに違いはどんな形で現れるか解らない。なら、あらかじめ相違をこっちから用意して、姫が俺らの側にいた方が都合が良い」

華菜ちゃんの家。そっか。親友の家なら攻略対象のお兄ちゃん達と一緒にいる訳じゃないからイベントが起きたりはしないし、ストーリー上『親友と一緒に遊んでいる』で済む訳だ。家にはいないけど、お兄ちゃん達と接触する機会が増えて、尚且つ華菜ちゃんと言う監視の目がある。状況的にはあまりゲームと変わらないけど、守り的には固くなるって事だね。成程。お兄ちゃん達は相手側の付け入る隙や、可能性を一つずつ潰してくれてる訳だ。ゲームに添うように。凄いなぁ。

早速持っていたスマホで今度は華菜ちゃんに連絡する。軽く状況を説明して、迷惑かけるかもしれないけど、泊まりに行ってもいいかと問うと、こちらが全文打つ前にオーケーの返事が返ってきた。お揃いのパジャマの画像と一緒に。可愛い。白猫柄のパジャマ。って違う。ついつい意識がお泊りの方に行っちゃった。

「それから、私はあと何したらいいの?」

お兄ちゃん達の意見を聞こうと待機すると、お兄ちゃん達は顔を見合わせて、すぐにこちらに視線を戻して、

「後はない」

「うん。ないな」

「あー、けど報告はあるで?姫さん。ステータスのスキルの所開きぃ」

ステータスのスキル?

言われた通り開いたら、そこに見覚えのないスキルがあった。

「『口寄せ』?」

それって、良く漫画とかそう言うので、イタコって言う霊能力者がやる霊を自分に降ろす技、だよね?え?それが出来る様になったの?

「…えーっと、奏輔お兄ちゃん?これ、どうやるの?」

「これな。一般的に知られてる口寄せとは能力が違うんや。このスキルで言う所の『口寄せ』は本当に口を引き寄せる…要は俺等が遠く離れてても姫さんが聴きたいと願えば、俺等の声を聞く事が出来る能力や」

「電話?」

「せやね。ただし、これは、姫さんの下へ声を集める事は出来ても、姫さんから発信する事は出来ない」

「私からの声を届ける事は出来ないんだね?」

「そー。でも、オレ達には、『聴き耳』スキルがあるからー」

「『聴き耳』?」

「決めた対象の声はどんな遠くからでも聞き取れる能力だ。対象は一人に絞られるがな」

「俺等はこのスキルの対象を姫さんに登録しといたから、安心しぃ」

って事は、私は三人の声をどんなに遠くにいても聞きとる事が出来て、逆に三人は私の声だけを聴きとる事が出来る。やっぱり簡単に言えば『脳内電話』って事なんだと思う。

「ほな、ここまで決まった所で、姫さんを花崎の家まで送ろか」

「え?でも…」

奏輔お兄ちゃんに立つように促されてそのままドアの側へと連れて行かれる。

でもでも良いのかな?不安だよ。奏輔お兄ちゃんが落ち着かせるようにニッコリと微笑んで大丈夫って言ってくれる。あのね?奏輔お兄ちゃん。そうじゃなくて…。

「大丈夫や、あとは俺等に任せて、姫さんはゆっくり女子トークを楽しんだらええ」

「あ、いや、そうじゃなくてね?」

「ん?」

顔だけで振り返ると、

「奏輔っ。また上手いとこだけ持って行く気かっ」

「譲れー。そこを譲れーっ」

「………」

透馬お兄ちゃんと大地お兄ちゃんがぐわしっと奏輔お兄ちゃんの肩を掴んだ。

奏輔お兄ちゃんはにっこりと、それはそれは黒い笑みを浮かべ、

「さ、行こか。姫さん」

完全に無視を決め込んで私と一緒に部屋を出た。

…その後、奏輔お兄ちゃんは咲お姉ちゃんと所用で出かけてタイミング良く帰宅した桜お姉ちゃんの攻撃にあい足止めされた。

大地お兄ちゃんがその隙を見て送ってくれると言ってくれたんだけど、華菜ちゃん家に向かう最中に配達に出ていた勝利お兄ちゃんと将軍お兄ちゃんに仕事を手伝えと回収されて行き、すかさず透馬お兄ちゃんが送ってくれるって言ってくれたんだけど、途中七海お姉ちゃんの襲撃に遭い、結果華菜ちゃんに会いに行く途中だった逢坂くんと合流し、華菜ちゃんの家まで向かったのだった。

華菜ちゃんがボソッと。

「いつになっても身内には敵わないものだね」

って言ってたけど、…うん。納得しか出来なかった。

私も身内に敵う気はしないからねっ!!

…今度こそ大丈夫かな?

お兄ちゃん達が私に教えてくれなかった事とかがグルグルと頭の中を巡ったけど、私はお兄ちゃん達を信じてジッと待つ事にした。

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